『すふらんのdialog』 ここは来てくださる皆さんと私の大切な出会いの場所 新田先生の作品『春を抱いていた』を中心に BL作品・声優さん・個人的趣味を綴っています

  すふろーぐのナビゲーター   トップページ > 駄文SS・コスプレ  

今日は駄文なSS

2015 - 11/25 [Wed] - 10:43




皆さんこんにちは(^o^)
ハッキリとしないお天気が続きますね。
いよいよ冷え込んできそうなので、お互い風邪をひかないように気をつけましょう。

さて、今日は私の昔のSSをもうひとつ再掲載させてもらおうと思います。
以前某さまのサイトにさしあげたものですが、既に放置状態もいくひさしく…これもこちらにひっぱってこさせていただきます。
某さますみません。ありがとうございましたm(_ _)m

かれこれ10年も前の作品ですので、今の揺るぎない二人とは少し感じが違うと思いますが、そのあたりはご承知おきくださいませ。
また世の中も今のように当たり前にスマホが主流な時代ではなく、まだまだ圏外と表示される場所が少なくなかった状況下でのお話設定です。ガラケー全盛時代でしたね。
再掲載にあたり、句読点や誤字(今になって気付いたといううつけ者です;;)ブログの横文字数に合わせた修正をしています。
少しだけ内容もいじりました。
2005年4月のものです。
駄文でもいいよと思ってくださる方。
もしお時間がおありでしたら、よろしければどうぞ…m(_ _)m









                  ~~ Feverish ~~



俺は今、二泊三日の撮影予定で地方ロケに来ている。
秋の特番のサスペンスドラマのクライマックスとなる撮影だ。
俺の役柄は犯人の妻の昔の恋人。
出番は少な目ながら、事件解決へのキーパーソンの一人となる重要な役どころだ。
しかもこのドラマの監督から求められる、その男がもつ独特の雰囲気をさりげなく表現してくれという、かなり難しい役だ。
ゴールデンタイムという時間枠を度外視しても、
俳優としての実力が問われる、小作品ながら社会派の辛口ドラマになる。


それにしても、本当に俺は…………
思わずため息が漏れた。
すまない。香藤。
やはりおまえが心配した通り、夕方になってかなり熱が出てきてしまった。
大事をとって、もっと早くに薬を飲んでいれば良かったのに。
俺は、今朝早く出掛けの玄関口で香藤とかわした会話を思い出す。



いつものように、いってらっしゃいのキスをしようと、何気なく俺の唇に触れた香藤が、一瞬おかしな顔で俺を見つめた。
そして小首をかしげながら眉間に皺を寄せた。

「岩城さん? 熱! 熱あるじゃん!

 夕べは何ともなかったのに…

 んあ~~っ俺としたことが不覚っ!

 今の今まで気付かなかっただなんて……

 大丈夫?

 ていうか、今熱ある自覚、ある? ど?」

そう言うと香藤は、俺のひたいに自分のおでこをくっ付けてきた。

「ん? そうか?

 そう言われてみれば……

 おまえのおでこが何となく冷たく感じる」

「ほら~~絶対にあるって! いつもは俺の方が体温高いんだもん」

俺の体のことなら、たぶん俺より何でもわかってしまうおまえ。
香藤にそう言われ初めて熱を自覚した俺。

「でも、これくらい大丈夫だ。心配するな。

 あっても微熱くらいだろうから。

 ──ん? 今の清水さんだな?

 じゃ、香藤、行ってくるから」

「ほんとに? 大丈夫? 無理しちゃダメだよ? ね?

 岩城さん、放っておくとすぐに無理しちゃうんだから~~

 山奥で二泊三日だなんて、俺、心配でたまんないよ」

「わかったわかった。無理はしないよ。

 そんな、あんまり子供扱いするな。

 おまえも、気をつけてな?」

「…うん……行ってらっしゃい」

心配そうな顔でそう言いつつ、俺の体を放そうとしない香藤。
しようがない奴だな。
チュッと、その唇に行ってきますのキスを落としてやると、香藤は渋々といった渋面でやっと俺をその腕の中から解放した。



さっき清水さんから、おまえがどんなに電話口で慌てていたのかを
聞かされた。

バカ───……

確かに携帯が圏外になってる。
仕方がない。こんな山奥じゃ。
つながらない携帯に、思いっきりイライラしまくった香藤の顔が目に浮かぶ。
気を利かせ、旅館の電話からおまえの携帯に連絡を入れてくれた清水さん。
いつもながら俺たちの良き理解者の彼女。
本当にありがたいと思う。


実は撮影が夜の撮りに入った頃、休憩時間に急にグラッときてしまった。
その瞬間、変に躓いてはかえって危ないと思った俺は傍らにあった木に手をついてしゃがみ込んだ。
気を失ったとか、倒れ込んだとか、決してそういうわけではなかった。
けれどそこを運悪く、たまたま通りかかった女性スタッフ二人に目撃され…
監督を初めスタッフの皆から、また明日もありますからと、俺には有無を言わせず宿泊先の旅館に帰されてしまった。
人の揚げ足を取り、弱味につけこもうとする輩が多いこの業界にあって、こんな生ぬるい俺に嫌味のひと言もなかった。
こんな時に体調を崩すなんて、役者としての自己管理を問われても不思議じゃない状況なのに、だ。
申し訳なさと、ありがたさと……
俺は心の中で何度も頭を下げ、明日はきっといい仕事をしようと自分を鼓舞した。


香藤と出会い、二人の時間を共有するようになってから、俺の人生の全てがうまくまわりだしたように思う。
そう、何度も思う。

香藤……

今、こんな情けない俺が、皆さんにはほんとに申し訳なく不謹慎なことだが、おまえの声が聞きたい。
俺のこととなると、途端に冷静さを失う心配症のおまえ。
香藤も今、俺の声が聞きたいと思ってくれているだろうか。
薬がだいぶ効いてきたのか、眠気が徐々に増してきた。
眠ってしまう前に香藤の声が聞きたい。
少しでいいから。
最近俺も……
ことおまえに関しては、堪え性がなくなってきているように感じる。
いい歳をした男が。笑える。
布団の中から這い出し部屋の電話の受話器を手に取った。

……やはり……やめようか──……

いや……

いくどか迷った末、結局自宅の番号をまわした。
もう香藤は帰っているだろうか。

トゥルル……トゥルル……プッ

「はい?! もしもし?!」

うっ…耳が痛い。
いつもより少し慌てた大きな声に香藤の今の状態が想像できた。

「香藤」

「岩城さん?! 岩城さんなのっ?!」

「ああ、すまん。心配かけた」

「岩城さん~~~っ良かった~~っ!!

 俺もう、心配で心配で、どうしようかと思ってたところだよ?

 何度も携帯にかけたんだ。けどつながんなくてさ……

 今時ずっと圏外だなんて、すっごい山奥なんだね。

 さっき清水さんから聞いたよ。

 でさ、岩城さんの具合が悪いって聞かされて。

 あ、ほら、今朝、熱あったでしょ。

 やっぱあれ、風邪の初期症状ってやつだったんだよ。

 俺の心配した通りだったでしょ?

 ──あ、ごめん、つい嬉しくってさ……まくしたてちゃった。

 岩城さん、今、大丈夫なの? 熱は?」

「いや、あいにく熱はまだ下がってないけど、今夜眠れば大丈夫だと思うから」

「ああっ! もう、ダメじゃん! そんな───

 でも、ありがと! 岩城さんの方から電話してくれて。

 俺、すごい嬉しいよ。声聞けて」

「香藤…」

「あ、そういや、えと、ええ~っと、ちゃんとご飯食べれた?

 薬は体に合ったの飲んだ?

 水分は多めに取らないとダメだからね。

 と、今何着てる? あったかくしてる?

 あっ、そうだ。部屋のロックはちゃんとかけた?」

次から次へと、よくこんなに口が回るものだ。
でも、そんな香藤の気持ちが嬉しい。
本当に俺のことを心配してくれているのが、この受話器を通して伝わってくる。
おまえの声。
大好きな香藤の声。
俺だけのもの。
熱のある体に染み込んで、余計に俺の体を熱くさせる。
愛しさで、胸の動悸が……汗ばんでいる俺。

「───て、ん? どした?

 岩城さん? 大丈夫?」

「ん? ああ、平気だ。

 おまえがあんまりいっぺんに聞くから、何から答えたらいいのかわからなくなっただけだ」

「へ? ああ、ごめんごめん~~そうだね、アハハハハ…

 こういうの、俺の悪い癖だよね。ごめん」

「ハハ…いいんだ。おまえの声聞いたら、何だか気が抜けて……

 安心したみたいだ」

「っ! 岩城さ~~ん! (ま~たこの人は…直球だよっ! 嬉泣)

 お、俺、そっち行きたいよっ!

 なんで瞬間移動できないんだろね!」

「バ、バカ! 何言ってんだ。

 今おまえがここに瞬間移動してきたら───

 俺はごめんだ」

「ああっ?! 何それ~~そんなこと言う? ひどいよぉ岩城さん」

「プッ、すまんすまん。

 ………と、香藤……悪いけど、そろそろ休む。

 おまえも戸締りちゃんとしろよ?」

「うん……ありがと、岩城さん。

 岩城さんもちゃんとあったかくして、ゆっくりと休んでね」

「ああ、ありがとう。おやすみ、香藤」

「おやすみ…愛してる、岩城さん」

「ああ、俺も……」

チュッ、とフレンチキスをかわし合い、お互いに受話器を置いた。
いつものように、俺が先に。
香藤。俺だって、やっぱり受話器を先に置くのは嫌なんだぞ?
解ってるか?



俺はもう、おまえを失って生きてはいけないだろう。
今の自分が、香藤とこうなる以前の俺よりも弱くなったのか。
そう問われれば、そんなつもりはないと今はきっぱりと答えられる。
常に、香藤に相応しい自分でありたい。
いつまでも、香藤が俺の存在を恥じぬよう。
俺は──……
いや、今夜はもうこれ以上考えるのはよそう。
頭をからっぽにして、耳に残る香藤の声が消えてしまわないうちに、眠りにつこう。
今夜はおまえの夢だけ見れればいい。
たれ目で可愛いおまえの夢を。

おやすみ、香藤。
 



2005.4

 
2015年11月修正





ご訪問並びに拍手&拍手コメントありがとうございます!!m(_ _)m
この記事の拍手コメへの御礼お返事は 順次 ↓ の続きへどうぞ

続きを読む »

祝!! 岩城さんお誕生日(*^0^)∠※PAN!☆

2015 - 01/27 [Tue] - 11:59





M/D&T  1/27 00:00
From   香藤
Sb     お誕生日おめでとう



岩城さんへ


お誕生日おめでとう~~~!( ((*≧▽≦*)) )

俺、一番だった?(笑)


今さらだけど…伝えたい。 

愛してる

何百回でも何千回でも何万回でも言わせてください。

愛してる

愛してる 岩城さん




今夜は残念ながら帰れそうにないけど(泣)今日の夕方には帰ってます。
美味しいシャンパンと夕飯準備して待ってるからね!
おやすみなさい(* ̄ ・  ̄*)


香藤






日付が替わった瞬間。
ベッドの上で受け取った香藤からのメッセージ。
言葉にならない温かな想いが俺の胸にひろがっていった。

今日一日。
時間の経つのがとても遅く感じられたが、それも やっと。

早く帰ろう。
香藤の待つ我が家へ。
ありがとう 香藤。大好きだ。

俺も…

愛してる 香藤







あらためまして。

岩城さんお誕生日おめでとうございま~~す ♥♥♥

(*^0^)∠※PAN!。.:*:・'゚☆。.:*:・'゚★゚'・:*






ご訪問並びに拍手&拍手コメントありがとうございます!!m(_ _)m
この記事の拍手コメへの御礼お返事は 順次  ↓ の続きへどうぞ

続きを読む »

昔のSS第三弾

2014 - 11/20 [Thu] - 12:02



今日は他サイト様に置かせていただいていた、私の昔のSS再掲載第三弾です。
ほんの少しだけ修正を加えました。
相変わらず文章がくどい駄文ですが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


それからこれは前回の激励会に参加された方々へ。
当日残念ながらドタキャンされた某さまより、
「ご心配おかけしてすみません。体調ももとに戻りつつあり年末の春抱きを心待ちにしています」とのご報告をいただきました。
良かった良かった!(*^。^*)
次回は是非某さまもご一緒に萌えお喋りいたしましょう♪
いよいよ寒さも本格的。くれぐれもご自愛くださいませ。
以上ひと言ご報告でした。











                    二人~清水の役得~




 タタッ─────
 スタッフの大部分がスタジオから引き上げ、比較的静かになってきた局の廊下に、
 一瞬響いた忙しげな足音。

 『香藤……さん?』

 清水は思わず控え室のドアを見つめたが、誰も入ってはこなかった。
 違ったのか、と、傍らで横になっている岩城の方に向き直った瞬間、
 コンコン、という小さなノック音。
 清水の「はい」という返事に続いて、

 カチャ……リ

 至極遠慮がちにドアノブをまわす音がした。

「まぁ、香藤さん……そんなに……大丈夫ですか?」

 清水はびっくりして、座っていた椅子から立ち上がり声をあげた。
 そこには、はぁはぁと肩で息をする香藤の姿があった。
 自宅から車を飛ばし、局の駐車場からはおそらく階段でも駆け昇ってきたのだろう。
 岩城の控え室前でいきなりその動きと音を押し殺したと思われる香藤。
 吹き出た汗が一つ二つ、玉となってひたいに浮かんでいる。
 しかし忙しく呼吸しながらも、視線はしっかりと清水の後ろのソファーに横たわる
 岩城に注がれていた。

「すいませんっ、清水さん……岩城さんの具合、どうです、か?」

 とぎれとぎれに、香藤はそこでいったん大きく一つ深呼吸し清水に視線を向けた。

「はい……幸い、スタジオからこちらに移動してからは、
 一応吐き気は収まって落ち着かれていたようです。
 でもお仕事終えられた安心感で、きっと気が緩まれたんだと思います。
 私が何度か出入りしている間に眠ってしまわれたようです」

「そうですか……」

 とりあえず清水のその言葉にホッと胸を撫で下ろした香藤は、
 再び岩城に視線を戻すと、ゆっくりとその傍らにしゃがみ込んだ。
 



          ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 




 話は数時間前にさかのぼる。
 岩城は相変わらず忙しい日々を送っていたが、今日は朝からドラマの撮影。
 3時過ぎに某雑誌からの取材を受け、夕方からは食品メーカーのCM撮影の為、
 この局のスタジオに移動していた。
 そんな中時刻も7時を過ぎた頃、撮影が一旦休憩となり、
 メーカー側から弁当が差し入れられた。
 しかし岩城は、その弁当にはひと口も箸をつけず、
 休憩時に清水に頼んでおいた自販機の紅茶を少し口にしただけであった。

「岩城さん……あのぅ……大丈夫ですか?」

 ふと聞こえてきた清水の声に、岩城はハッとして顔を上げた。

「あっ……すいません、清水さん。大丈夫です」

「それならいいんですが、お顔の色が……」

 心配そうに岩城の様子を伺う清水に、岩城は苦笑を返した。
 昨日辺りから何となく岩城の顔色がよくない。食欲もない。
 ここのところのハードスケジュールによる疲れと睡眠不足────
 ここ暫くまともな休みが取れていなかった。
 それでも文句の一つも言わない岩城。
 売れっ子であり、既に事務所の大看板でもある岩城を、
 世間も事務所も放っておいてはくれない。
 岩城自身も、事務所の期待を背負う責任を十分に自覚しているのだろう。

 だが清水は、そんな岩城だからこそ、何とかして一日でもオフを取らせたかった。
 いくらなんでも岩城は働き過ぎだと彼女は思っていた。
 密に、清水は数日前から岩城のスケジュールを調整しまくり、
 あちらこちらに手をまわし頭を下げてまわった。
 その甲斐あって、やっとの思いで明日から一日半だけだが、岩城のオフを
 もぎ取ることに彼女は成功したのだ。
 
   「えっ?!オフ ですか?こんな忙しい時期に……ほんとに?
    そんな……清水さんこそ無理して……大丈夫なんですか?
    あっちこっちに、頭下げまくってくださったんじゃ……
    ……ありがとうございます。嬉しいです。
    せっかくの清水さんの頑張りを無駄にしないように、
    明日は俺も、いつも以上に張り切らないといけませんね」

 昨夜遅くになって話を聞かされた岩城は、清水のことを気遣いつつも、
 嬉しそうにホッした表情でそう言った。
 その言葉通り、彼は今日も朝から精力的に仕事に取り組んでいた。
 しかしながら、ここのところの連日の疲れやストレスの蓄積。
 時間がたつにつれ、岩城の状態が悪くなっていくのは自然な成り行きとも思えた。
 人間が精神で持ち堪えられる範囲には限界があるものだ。


「岩城さん……お食事、お昼もあまり召し上がらなかったですよね。
 お体持ちません。
 食べられそうなら何でも、私 ご用意しますから……
 どうぞ遠慮なさらずに仰って下さい」

 少し控えめに、清水がまたそう言うと、岩城は再び苦笑して首を横に振った。

「いえ……心配かけてすいません。
 何だか食欲なくて……でも、大丈夫ですから。
 それに、今夜を乗り切れば、明日は清水さんのおかげで休めますし。
 気を引き締めて、もうひと頑張りです」

「そう───ですね……やっと休んでいただけます……
 本当にお疲れ様です。
 でも、何でも……お口にできそうなものがあれば、仰って下さいね」

「はい、ありがとうございます」


 撮影自体は順調に撮りを重ね、岩城もそんな調子の悪さなど、
 表には微塵も見せなかった。
 休憩時間になると、たとえ休憩用の椅子にもたれかかるように目を閉じ、
 眉間に皺を寄せていても。
 プロとしての意地が岩城の精神を支えていた。
 ……………………………
 それにしても空気が悪い。
 このスタジオ内に立ち込める食品独特の匂いも、気分を悪くさせる一つの原因だった。

 そして時刻は既に9時をまわり、やっと今回の最終の撮りとなった。
 岩城と他の出演者との会話と食事シーン。
 岩城は背筋をピンと伸ばし、セットの中でカメラに笑顔を向ける。
 二口、三口、手にした皿の料理を口に運び、パート1、パート2。テイク1、テイク2。
 最終パートはすんなりとOKとなり、今夜の収録は全て完了した。
 しかし、監督の口から発せられたそのOKの声とほぼ同時に、
 普段ならば「お疲れ様でした~」の声がかかるであろう、まさにその瞬間。
 いきなり口元を押さえた岩城が、真っ青な顔でスタジオを飛び出していってしまった。
 唖然としたスタッフや共演者達は、思わずその声を飲み込んだ。

 しばらくして、スタッフの一人に付き添われ廊下に姿を現した岩城の顔色に、
 清水は岩城が嘔吐したことを悟った。
 とりあえず控え室のソファーに岩城を休ませ、岩城が落ち着いたことを確認すると、
 再び廊下に出た清水は、少し迷いながらも思いきって携帯を取り出した。
 普段なら、公私混同を良しとしない岩城の為にも、
 そういう差し出がましいことはしない清水ではあったのだが。



          ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 

「岩城さん、すぅすぅ寝ちゃってますね……」

 岩城の白い顔をじっと見つめながら香藤は呟いた。

「ええ……こんなに…………申し訳ない気持ちで一杯です。
 明日がオフだということもあって、
 きっと一気にお疲れが出てしまわれたんだと思います。
 朝からあまり食べていらっしゃらなかったのに、
 撮影で何度も刺激物を口にされたのが引き金になったと思います。
 スタジオの空気も悪すぎました。それは誰もが感じていました。

 ─────ほんとなら、いつものように私がご自宅までお送りするんですが、
 こういう時は、私より香藤さんの方が安心されるかと思いまして、
 岩城さんには黙って……私単独に動きました。
 何かご迷惑にならなかったのならいいのですが……」

「何言うんですか清水さん!そんな……俺、ほんとに感謝してます。
 あっ……俺、まだお礼もちゃんと言って────すいません!清水さん。
 本当にありがとうございました!!
 さっき連絡いただいた時は、さすがに俺もびっくりしちゃいましたけど。
 状況伺って大体のことはわかりました。
 連絡、ありがたかったです。
 岩城さんだって、きっと喜んでくれると思うし……ありがとうございます!」

 岩城のことを心配するがあまり、清水に、まだひと言の礼も言ってなかったことに
 気付いた香藤。
 慌てて立ち上がり、そう言って清水に深々と頭を下げた。

「いいえ!とんでもないです……でも、香藤さんこそ大丈夫でしたか?」

「あぁ、はい~~大丈夫です。電話では慌てちゃってすいません。
 ちゃんと安全運転してきましたから(笑)
 それに今日は俺、夕方には帰ってましたし、実は明日は俺もオフなんですよ!
 ゆうべ遅くに、岩城さんからオフ取れたぞって話聞いて、
 やったね~っ!て喜んでたんですけど………
 でも、岩城さんのこの寝顔見たら、ちょっと安心しました。
 いつもより顔色は白いけど、もどした割には結構穏やかな顔で眠ってますもんね」

 香藤はいささか乱れた髪をかきあげながら、少し苦笑気味に笑った。

「たぶん、眠ったばっかだろから、起こすのはちょっと可哀想だけど、
 このままだと岩城さん、後で余計辛いだろし………
 お姫様抱っこ、なんてやらかしたら、この人 しばらく口きいてくんないだろなぁ~
 俺は全然平気なんですけど、ね(笑)
 一旦起こして連れて帰ろうと思います。
 いいですか?清水さん」

 清水のことも気遣ってくれているのだろう。冗談まじりにそう笑う香藤につられて、
 清水の緊張も少し緩み、クスッと小さな笑いが漏れた。

「そうですね。その方が………お願いできますか?」
 
 「はい」と微笑んだ香藤は、再び岩城の傍らにしゃがみ込んで、
 毛布から覗く岩城の肩口に手を伸ばしかけた。
 だが、彼はふとその動きを止めてしまった。
 穏やかな寝顔で睡眠を貪っている岩城の眠りを妨げてしまうことに、
 やはり躊躇しているのかもしれない。
 そのまま岩城のことを見つめているのだろう。
 あいにく清水の位置から香藤の顔は見えないが、そんな香藤の心が伝わってくるようで、
 清水の口元には自然と優しげな微笑が浮かんだ。


 そのまま、僅かな時間ではあるが部屋には静かな時間が流れた。
 時折、わずかに響いてくる建物内外からの小さな雑音を除けば、
 岩城のたてている小さな寝息だけが、この殺風景な部屋に聞こえていた。

 ─────と、普段の香藤より、幾分低めの声が清水の耳に届いてきた。

「岩城さん……ほんとによく眠ってる……… 
 前に、ね………
 まだ冬蝉撮ってる時。
 俺も、夜中に吐いたことがあるんです。 
 そしたら気付いてくれた岩城さんが、
 すごく嬉しいこと……至極当たり前みたいに言ってくれて。
 俺 もう……たまんなかった。

 岩城さんて、普段はあんまりべらべらと喋らないでしょう。
 でもその分、時々俺でもびっくりするくらい…
 理路整然と、俺が泣きたくなるような厳しいこと言ったり。
 時には、俺でも考えつかないような突飛なことまでして、
 俺を怒らせてまで……諭してくれる。
 俺の為に。
 全部、俺のこと思って。

 ……でも可笑しいんですよ。
 逆に優しいことや嬉しいこと、言ってくれたりしてくれたり…する時、
 この人無自覚なんです。自分で気付いてない。
 いっつも、無意識に俺を甘やかしてくれて────

 そんな岩城さんの全部に、俺は……
 俺の全てを受け入れてくれてるこの人の存在に、胸が熱くなって。
 バカみたいに何度でも思うんです。
 この人は、何があっても必ず俺が守るんだ!って。
 
 だからね、こんな時、出来るだけ側にいてあげたい。
 ううん……
 岩城さんは決して弱い人間じゃないし、俺が側にいたいだけ。
  
 そう。 
 守ってるつもりで…守られてるの、いっつも俺の方だったりして。
 いつまでたっても、この人にかなわない。
 でも………守りたいんです。
 うまく言えないけど、
 何があっても、なくても、岩城さんを守るのは絶対に俺なんだって。

 ………………………

 あ、あれ?」

 そこまで言って、香藤はハッとして清水を振り返った。
 そこには満面笑みでニコニコ顔の清水。

「すいません!清水さん。
 俺、こんな時に何語ってんだか」
 
「いいえ。ご馳走様です!フフフ…
 こんなに香藤さんに想われて、本当に幸せな方ですね、岩城さん」

「え?
 やだな~~清水さん。俺が!だからねっ?」

「ま…」
 
 清水は、相変わらず臆面もなくそんなことを言ってのけるの香藤に、
 益々目元を細めた。

「でも…今の話、岩城さんには内緒だよ?清水さん。
 この人、照れるとすぐ『ばか!』だからね(笑)
 ンフッ、そこがまた可愛いんだけどさ(盛大なウインク)」

「はいはい、わかりました(笑)」


「岩城さん?……岩城さん、起きて?………岩城さん?」

 香藤の何度目かの呼びかけで、ようやく岩城の瞼がピクッと震えた。
 香藤と清水の話し声に気付きもしなかった岩城。
 普段では考えられない。余程深い眠りに入っていたのだろう。
 瞬きを数度繰り返し、ボウッとした黒い瞳が中から覗いた。
 少し眠ったお陰か、顔色はやや戻ってきているようだった。

「岩城さん、俺だよ?……大丈夫?」

 まだ意識が朦朧としているのだろう。
 緩慢な動きで香藤の声のする方へ顔を向けた岩城は、
 ようやくそこに愛しい男の存在を認識したようだった。
 一瞬、ひどく驚いて香藤を見つめたが、
 自分を一心に見つめる香藤のその笑顔に、フッと全身の力を抜き、
 すぐさまその目元を柔らかに染め上げた。
 そして、

 「かと……」

 と、ひと言。ひどく掠れた声でその名を呼ぶと、岩城は微笑んだ。
 開花を待ち望んでいた花が太陽に導かれ、
 その期を知り綻んでいくように、鮮やかに、華やかに。
 仕事では滅多と見られない、穏やかでいて…
 何よりも岩城自身が幸せそうな極上の微笑み。

「お疲れ…岩城さん。だい じょぶ?
 迎えにきたからね。一緒に帰ろ?」

 香藤のその言葉に、香藤と見つめあう岩城のその表情が更に変化した。
 顔色こそまだ幾分白っぽかったが、それは見る者全てをとりこにしてしまう、
 そんな魅惑的な、ある種エロティックな微笑みだった。
 清水が気を利かせ そっとドア近くまで移動していたせいもあるのだろう。
 今の岩城の視界には、香藤ただ一人しか映ってはいない。
 普段 誰にも向けられることのない、その潤んだ甘い視線。
 これが香藤ただ一人にのみ岩城が見せる素顔なのだろう。
 清水はそっと岩城から視線をはずした。
 
 だが、しばらくしてもういいだろうかと。
 そっと二人に視線を戻した清水の目に飛び込んできたのは、
 まさに驚くべき珍しい?光景だった。
 疲れきっていたところに もどして 短時間だが熟睡。
 寝起きの頭。そして愛すべき香藤の出現。
 気の毒に。
 たぶんここがどこかも忘れ周りも見えていない岩城。
 更に岩城の元へと体を寄せた香藤の首に、なんと岩城自らが腕を────
 目を閉じ、香藤の首根っこに抱きついてしまっている格好だ。
 さすがの清水もこれには思わずびっくりして目が吸い寄せられてしまった。

「岩城さん?……これ………
 嬉しいんだけど……俺ぇ、めちゃくちゃ嬉しいんだけど……
 でも、さ……きっと驚いちゃってるよ?清水さん」

「? ?
 ……え?…………………っ!!!!!」

 その瞬間、香藤の肩越しに清水と目があってしまった岩城は、
 完全にフリーズ。
 一瞬で項まで真っ赤っか。
 思わず後ろ向きに口元を押さえて肩を振るわせる清水。
 岩城のフリーズが溶けた瞬間、ものすごい勢いで岩城に押し返され、
 床の上に尻餅をついてしまった香藤。

 『明日。病院は……大丈夫そっかなぁ~?』

 目覚めて、案外元気そうな岩城の反応に、香藤の口元に笑みが浮かんだ。

 しどろもどろに慌てまくる照れやで可愛い年上の恋人。
 しばし蕩けるような笑顔で、そんな岩城を優しく見つめていた香藤であった。


 
 おわり

                      
 2006年6月
 2014年11月 ここでの掲載のため少し修正しました




ご訪問並びに拍手&拍手コメントありがとうございます!!m(_ _)m
この記事の拍手コメへの御礼お返事は 順次  ↓ の続きへどうぞv

続きを読む »

後編です

2014 - 11/05 [Wed] - 10:30



11月に入り、一気に寒くなってきたここ大阪ですが、皆さんお元気でしょうか?
さて、本日の再掲載SSは前回の続き。『水中花』後編です。
なお、前編の中でヒグラシの鳴き声はシャーシャーではなくカナカナでは?とのご指摘を拍手コメントからいただき、私がうっかりしていたことに初めて気付きました(おそっ;;)
そうですよね。シャーシャーだとクマゼミです。
10年近くうっかりしていていた私。どうもすみませんf(^_^;
某さま、ありがたいご指摘をありがとうございました。
カナカナに訂正させていただきました。
以上 ひと言お詫びと訂正でした。

ではよろしければ後編へどうぞ(〃▽〃)







     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・




(水中花・後編)





「ふ~…終わった!」


ソファーにどっかりと腰を下ろし、部屋中を見渡す。
 

「これでだいたい準備OKかな?

よし! あとは食べる直前 」

 
きれいに掃除されたリビング。
岩城の為に腕を振るった料理の数々。
そして、テーブル上の涼しげな水中花に再び視線がとまると、
思わずまた香藤の口元がほころんだ。
ごく自然にクッションに手が伸びる。


『岩城さん……さっきもいきなりの直球だもんね~ほんっと たまんないよ。

いっつも俺のことバカ呼ばわりしてるくせにさ。

時々、無自覚にズバッて来るもんなぁ~

総天然色ストライクッ!ってね。

それに…

最近は口に出して、愛してるってたまに言ってくれるようになったし。

こう…恥ずかしそうにさ…(ニヘラ~)

俺、もう幸せすぎて怖いくらいだよ。

もうすぐ帰ってくるかなぁ・・

北国生まれで暑さが苦手な岩城さんの為に、

少しでも涼しげで綺麗な花を選んだんだよ?これ。
 
この薔薇。色も形も上品だし、ほんっとに綺麗。

なんか…まるで岩城さんみたいじゃん?』


 ……………………………………


「えっ?俺、ちょっとヤバイ?

マジに岩城さんに見えてきちゃったよ…」


 ポワヮヮヮ~ン♪♪


今、香藤の目には、水中花の青薔薇が岩城に見え始めていた。
水中にホワ~ンと浮かびながら美しく揺らめく全裸の岩城。 
漆黒の黒髪が、まるで生き物のように岩城の顔のまわりで生めいて踊る。
黒曜石のように、気品ある輝きをたたえる黒い瞳が妖しく煌き、
ほんのり目元を紅く染め、誘うように香藤を見つめている。
半開きの柔らかそうな唇。
皇かで吸い付くような弾力を伝えるきめ細かな肌。胸。指先…
その全てで香藤が欲しいと、岩城の気だるげな視線が伝えてくる。
それはまるで、コトの最中に焦らされた岩城が時おり見せる媚態にも似て。
フェロモン垂れ流しの、世界でただ一人香藤しか知らない妖艶な岩城。


「うわっ!うわっ!! うわ~~~~~っ!!!

お、俺、もうダメ………

…………っ…やばっ………イテ、イテテテ…」


直撃された香藤の股間が、窮屈なGパンの中で悲鳴を上げている。
思わず股間を押さえながら苦笑する香藤。


「あっ、でも…うん? ちょっとまてよ……

これじゃあ岩城さん、息できないよね…

人間だと、水の中じゃ数分間しかもたないもん。

ダメだよっ、これ 」


何がダメなのか。
自分の勝手な妄想に、くだらない理屈を持ち出して拘る香藤。
しかし香藤がそう思った途端。
なんと全裸の岩城の姿が別の生き物へと変身を遂げていた。

 
「ほえ~~っ?!

か、可愛い~~っ!可愛い過ぎるよ岩城さんっ!!

俺、鼻血吹きそっ!

でもこれなら水の中でも息出来るし。

良かったねっ 岩城さん!良かったよっ!! 」


何が良かったのか。
またもや足をバタつかせる香藤。

なんとそこには…
艶やかな人魚に変身した岩城の姿が。
そして、そこですっかり安心しきってしまった香藤の頭の中では、
お約束通りというか、らしいというか、はたまた懲りないというのか。
そんな色っぽくも可愛い人魚岩城との 熱い、熱~~いHシーンが───
クッションを更に強く、力一杯抱き締めながらウットリと夢見る香藤。

 
「へっ?!」


だが突然切迫した声を上げた香藤は、クッションを抱え込んだまま
蒼白な顔色でその場に立ち上がった。


「ダメ……ダメじゃん!ダメダメ!!

絶対ダメだよっ!! ブンブンブンッ(←香藤の首振り音)

そんなのやっぱダメ~ッ!!! 」


 カチャ


まさにその瞬間、いつのまにか帰宅していた岩城がリビングのドアを開け
ギョッとした顔を覗かせた。


「香藤っ なんだ?! 何かあったのか?! 」

「っ?!  ああ~~岩城さんお帰り。

ダメなんだよぉ! 絶対にダメだからねっ!! 」


クッションをソファーに放り投げ、ガバッと岩城の体に抱き付く香藤。


「だから、いったい何がダメなんだ?!

俺が帰ってきたことに気付きもしないで…

こ、こらっ!かとっ!やめろっ、離れろ!!

いったい何がどうしたっていうんだ!

訳がわかるように説明してくれないか」


そう言って、自分の体にひっしと抱きついていた香藤を無理矢理引っぺがすと、
岩城は今にも泣きそうな香藤の顔を覗き込んだ。
香藤はシュンと鼻を鳴らし、岩城の顔を見つめていたが…


「香藤」


岩城のあらたまった口調に、香藤は渋々口を開いた。


「だからぁ…

ああ、ごめんね、岩城さん。

あのさぁ、あれが今日買ってきた水中花なんだけど」


ガラステーブル上の水中花をちろっと指差す。


「俺、やること全部済ませたし、後は岩城さんが帰ってくんの待つだけって、

ボ~ッと花見てたんだよ」

「ああ…すまない香藤。また全部おまえに任せてしまって…」

「違うよぉ!そんなの家にいる方がやればいいことだし、

俺、岩城さんの為なら何だって楽しいし、全然いんだけど…」

「ありがとう いつも。 …で、どうしたんだ?」

「……怒んない?」

「いいから言ってみろ」


岩城は上目遣いに自分にお伺いをたててくる香藤の、その柔らかい髪の
感触を楽しむように、ゆっくりとこめかみの辺りから指を差し入れた。


「うん。 じゃ…

あのね、この水の中の青薔薇見てたら…綺麗でしょ?

いつのまにか薔薇が岩城さんに見えてきちゃったんだよ」

「………は?」

「水の中に浮かぶ岩城さん。
 
一糸纏わぬ生まれたまんまの一番綺麗な岩城さん。

もうね、色っぽいってもんじゃなかったよ!」

「は…あ?」


岩城の動きがフリーズし、眉間に一本皺が寄る。


「けど、見てるうちに思ったんだよ。

岩城さん、水の中じゃ息出来ないじゃん?

人間だと、せいぜいもって数分でしょ?

なんて考えてたら、なんと岩城さん、変身しちゃったんだよ!

ね、岩城さん、何だと思う?」


「っ!…バカ!そんなもの、俺が知るかっ!」


両目が既にハートマークになっている香藤のニヘラ顔に呆れた岩城は、
香藤の髪に差し入れていた指を瞬時に引っこめ、プイッと横を向いた。
 

「なんとねっ、人魚!!」

「は?」

「人魚の岩城さんだよっ!もう、可愛くって可愛って!!」

「…やっぱり…聞いた俺がバカだった」


ため息と共に岩城の体が脱力していく。


「でもっ!!」


香藤のハートマークの目が、一瞬にしてウルウル涙目に。
再びガバッと岩城の体に抱き付いた香藤は、岩城の体中を撫で回しつつ、


「うう~っ、やっぱ俺、このまんまの岩城さんがいい!俺の岩城さ~ん!」

「なんなんだ いったい。

香藤、おまえの思考についてけないぞ?

その “でもっ!!” の後はどうなったんだ 」

「うん……クスン………ぃんだ……」

「えっ?」

「ないんだよ」

「はっ?何?何がないんだ」

「イイことしたくても○○○も△△△もないんだよぉ!!」

「?───────なっ!!」


思わず絶句した岩城の拳が打ち震える。


「そりゃね、俺は岩城さんなら姿形は何でもいいって思ったけど。

やっぱダメ!

俺の岩城さんなのにっ!そんなの俺、やっぱヤだよっ!!」

「──っバカッ!! 何考えてんだっ!!! 」


 バコッ!!


岩城のゲンコツが香藤の頭に炸裂して………




水中花の青薔薇は、騒々しい二人を涼しげに見守っていた。
ある夏の日のお熱い(?)お話。






                       ~おわり~








2005年8月
2014年11月再掲載にあたり加筆修正しました





ご訪問並びに拍手&拍手コメントありがとうございます!!m(_ _)m
この記事の拍手コメへの御礼お返事は 順次  ↓ の続きへどうぞv

続きを読む »

本日はSS前編

2014 - 10/30 [Thu] - 14:55



本日のお話はお笑いです(^。^ゞ
当時 突然二人の声が脳内に聞こえてきて…そこに私が東京の原画展に行ったさい、皆さんとランチをご一緒した某ホテルのパーティールームを取り入れて書きました。
2005年の夏のことです。懐かしいなぁ~
まだスマホじゃなくガラケーの時代です(私は今でもそうですが(^.^)ゞ)
皆さんのお耳にも、あのお二方の会話っぽく聞こえてくれればこれ幸い(笑)
なお、無駄にだらだら長いので(苦笑)前後編にわけてアップさせていただきます。
途中で飽きてきちゃったらすみませんf(^_^;

あ、そうそう…
ご存知のようにうちは単なるブログでサイトの形じゃないので、たとえばSSばかりを見ようと思うとカテゴリーわけから順番に進んでもらうしかありません。
以前何度かサイトにする気はないのかとお尋ねいただいたのですが、私のようなアナログ人間にはブログくらいがちょうどいいみたいで、面倒くさくてすみませんf(^_^;

では よかったら読んでやってくださいませ。
特に後編、おバカな香藤くんが大好物の方に笑っていただけたら嬉しいです♥









                  ──  水 中 花 ──




「うっわぁ~~ やっぱきれい!!

これにして良かった。正解。

ん~っ 涼しげでいいね! 

岩城さん、喜んでくれるかなぁ」

 
夕方の5時を過ぎたというのに、外はまだうだるような暑さが続いていて、
灼熱のアスファルトの照り返しは、いまだそのなりを潜めず、
日中の熱気を辺りに撒き散らしていた。


 カナカナ カナカナ カナカナ …


どこかでヒグラシが鳴いている。
先程帰宅した香藤は、帰りに買い込んで来た食材をいったん冷蔵庫に片付けてしまうと、何軒かの店をまわって買い求めてきたグッズ類をテーブルの上に並べてみた。
ガラスでできた円筒形の器、ビー玉、花。
そう、水中花だ。
各々をぶつけないようにセッティングし、フィニッシュに水を注ぎ込み、
夏らしい納涼グッズの出来上がり。
 

ようやく空調の効き始めた快適なリビング。
香藤はクッションを胸に抱え込み、テーブル上の涼しげな花に目を細めながら
満面の笑みで愛しい男の顔を思い浮かべる。
そのまましばしソファーの上の住人となっていた香藤だったが、
ふと、テーブルの端から落ちかけている自分の携帯に目がとまった。


「あっ!そうだっ、岩城さんにメールメールっと♪」


携帯を手に取りいそいそと文字を打ち込み、


「愛してるよっ、岩城さん!」


のかけ声と共に送信ボタンを押した。
携帯を置く前に、いったんその手を止め 待ち受け画面に微笑む。
いつもの香藤の癖。
そこには世界でたった一枚、自分だけに向けられた岩城の幸せ顔が。
 
 
 ブルブル…


「えっ?」


メールを打ち終わって1分も経たないうちに香藤の携帯が振動し始めた。


『ゲッ?! まだバイブだった!』

 
慌ててテーブルに手を伸ばした香藤の顔が、一瞬にしてパァッと輝く。
ディスプレイには “着信 岩城さん” を告げる文字が。


「ハイッ!」


『っ、かと?』


「うん!俺 」


『えらく取るのが早いな』


「へへん。でしょ?

でもまさか 岩城さん?って思っちゃったからさ、俺 無駄に慌てちゃったよぉ」


『はぁ?なんで慌てるんだ?変な奴だなぁ』


「変な って───もうっ、失礼しちゃうなぁ…

岩城さん、恋する男心がわかんないの?」


『わかりたくないが…(←小声)』

「も~~っ、岩城さんの意地悪。

あ、でも…なんか珍しいよねぇ。

こんな時間帯に岩城さんの方からかけてきてくれるなんて。

…ねぇ…まさか何かあったんじゃないよね?」

『ん? いや、別に何もない。

おまえ、相変わらず心配症だなぁ。

でも、そうか?珍しいか?』

「うん。珍しいよ、この時間帯はね。

でも、良かった~俺、すっごく嬉しいよ。

電話してくれてありがとっ 岩城さん!

あっ…と…でも今 休憩時間だよね?」

『ああ、今ちょうど休憩に入ったところだ。

上着のポケットから携帯を取ろうとしたら、ちょうどおまえから来てて…

俺もちょっとびっくりしたんだ』

「ほんと? やったぁっ!俺ってラッキー!!

やっぱ、愛だね、岩城さんっ。
 
夫婦の深~~い絆!なんちゃって。

か~っ!萌えるぅ~~っ!! 」

『……・・・また おまえは』

「あれれ?岩城さん。ま~た照れちゃってる?  岩城さん──」

『香藤っ!』

「可愛いっ!! アハハハハハハ」

『ばっ…だから!それはやめろって。

全く、おまえは………

・・・コホン……あーそれより何だって?水中花?』

「うん!今日ちょっと思い立ってね。

えと、岩城さん?今 喋ってていいの?」

『ん?ああ、構わない。しばらく清水さんも席はずしてるし』

「そ?良かった♪

あのさ、今日 俺 日○レの撮りだけだったでしょ?

共演してる事務所の先輩がね、偶然同じ上がりだったんだ。

でさ、共演してる新人の子達と一緒に飯でもどう?てお誘いがあってね。

岩城さんの帰り、夕方以降だってわかってたからさ。

せっかくだしね。なんかこういうのってこの業界じゃ結構珍しいし。

新人の子達も喜んでたよ」

『そうだな。俺たち普段、あんまりそういう機会ってないからな。

日○レの近くっていうと──新橋の辺りか?』

「そっ!新橋の近くの○○ホテルのパーティールームなんだけど、

すぐに予約取れてさ、昼間だとああいう場所は穴場だね。

いい感じの部屋だったよ~ 黒系でまとめてあって落ち着いた感じ?

あそこなら仲間内で騒げるし、夜なんかもいいだろね。

また今夜詳しく話すから、岩城さん聞いてね!」

『クス…ああ』

「おっと…でね、そこに水中花が置いてあったんだ」

『え? ああ、なるほど。

それでおまえも欲しくなって───帰りに買って帰ったと』

「ゲッ……話 はやっ! って、早過ぎない?

岩城さん、俺のことほんっとよく解ってらっしゃいますです。ハイ。

でも、なぁんかちょっとヤな感じ?アハ、アハハハ……」 

『プッ…おまえの行動パターンくらい、俺がわからないとでも思うのか?』

「ひっひ~~ん た・し・か・にっ!

だって、毎日こう暑いと気分だけでも涼しくしたいじゃん?

それ見ててさ、俺 うちにも欲しいなぁ~なんて思っちゃったんだよ。

あ、でもすっごく綺麗なんだよ?涼しげでさ。いいよぉ~」

『そうか…おまえが選んだなら…どんな感じなんだ?』

「あのね、外のガラスの器が結構おっきな円筒形なんだ。

そこにね、お決まりのビー玉とか葉っぱ沈めて…

選んだ花が薔薇なんだよ?

普通、水中花ってトロピカルな感じの花が多いでしょ?

でも俺、あえてそういうらしくなさそな感じ?を探してみたんだ。

ちょい時間かかったけどさ」

『ほぉ…おまえにしたら えらく拘ったもんだなぁ』

「あ? おまえにしたらって───岩城さんひどいよう、愛する俺に。

この暑いのにメガネかけて帽子被って、結構苦労したんだよ?
 
そんなこと言うんだったら……今夜苛めちゃうから。いいの?」

『ばっ、バカ!昼間っから何バカなこと言ってんだ! 』

「ハイハイ。 (もう~岩城さん可愛いんだから←小声) 

いいよもう。一応許してあげるから」

『何? 許してあげる?

…香藤、なんで俺がおまえに許してもらわなきゃいけないんだ』

「ああ~ん! もう!岩城さん、そこは流すところなの!

それより、ねっ。何色の薔薇だと思う?」

『…~…(←ため息)さぁ、何色なんだろなぁ。

おまえがそんな風に聞いてくるってことは…

赤やピンクじゃない、てことか?』

「そっ!さすがだねっ、岩城さん。 だったら、何色だと思う?」

『そうだな。 さっきおまえが涼しげで、て強調してたから…

ん…水中花か……

黄色でもないし、紫っていうのも案外ありきたりだし。

ん? あ、ひょっとしたら青系。水色だったりするのか?』

「えっ?!  …ピンポン…

すごっ…すごいよ岩城さんっ!! よっくわかったねっ!! 」

『っ……』


一瞬思わず、耳から遠ざけた携帯を睨む岩城。


『香藤、そんな大声で…音 割れたぞ?』

「えっ?ほんと?

ごめんごめん。つい興奮しちゃった。ごめんなさい。

でもその通り。きれいな青と水色の薔薇なんだよ!」

『プッ…そうなのか?

しかしおまえ、そんなに興奮しなくても。

おまえももう三十路なんだろ。
 
少しは自分の歳も自覚しろよ?』

「もう!岩城さんったら さっきから俺のこと───

ねぇ、 何吹いてんの?!」

『アハハハハ………怒るな香藤』

「もうっ! ずるいよ岩城さん」

『クククッ………(…香藤、大好きだ)

おまえに選ばれたその青薔薇に、俺も早く会いたいよ』

「いっ、岩城さんっ(ズッキュ~~ン)」

『しかし、何というか…』

「ん?何?」

『おまえの格好』

「え?」

『ソファーの上でクッション抱えて足バタバタさせてるだろ』

「ええっ?! なんでわかんの?

あっ、ひょっとして岩城さん?どっかから俺のこと見てたりして」

『バカ、そんなことあるわけないだろ』

「あ、またバカって言ったぁ。むぅ~~っ

でも、だよね~~アハハハ……

すごいよ 岩城さん。俺のことなら何でもわかっちゃうんだから」

『ああ、おまえ限定だ 』

「っ!?! 」


3秒後、ボフッとクッションに赤い顔を埋めながら完璧に溶けた香藤。


『香藤、どうした? かとっ?』

「俺、もうダメ………岩城さんったら、ほんっとにもうっ」

『えっ?何だって? 香藤、今度はよく聞こえなかったぞ?』


 んも~…たまんないよ 俺っ


「いいのいいの!それより岩城さん、早く帰って来てね!

俺 さっき買出しもしてきたから、今夜は美味しい夕食用意して待ってるよ」

『ん?そうか?(…・・・何なんだ?)

わかった。 じゃあ悪いけど、頼む』

「了解!」


  …………
 
  (あ、はい)


『香藤? すまん。今 清水さん戻ってきてちょっと打ち合わせだ。

たぶん7時頃には帰れると思うから』


「わかった! 仕事、頑張ってねっ!

あ…岩城さん?俺 長電話させちゃったみたいで、ごめんね」

『いや、いいんだ。 俺も…』

「愛してるよ」

『ああ、俺も……じゃ…』

「ん!」


香藤は軽いリップ音を送った。
そしてまた、切れた携帯の待ち受け画面の岩城を優しい笑顔で見つめる。

 
「俺ってほんとに幸せ者…」


ぼそっとそうひと言呟いた香藤は、もう一度クッションを抱え直しながら、
蕩けそうな笑顔で宙を見つめた。
その幸せな余韻にもっと浸っていたい香藤ではあったが、岩城の帰宅までに
しなければいけないことは山積みだ。
二人一緒の在宅時にはなるべく雑事に時間を取られたくない。
二人だけの時間を大切にしたいから。
そして、少しでも岩城の体を休ませたいから。
やれることは全てやっておくのだ。
岩城の為なら家事全般なんのその。何の苦痛も感じない香藤であった。


「よっし じゃ、頑張るとしますか!」


ニヤけた顔を瞬時にやる気満々の男前に変化させた香藤。
前髪の一箇所をちょいとピンで留め、少し伸びてうざくなり始めた後ろ髪を
ふわふわゴムでキュッと括る。
主夫業開始だ! 

 
まず、腕まくりよろしく家中に掃除機をかける。
乾燥機から取り出した洗濯物をたたんで各場所になおす。
キッチンで料理の下ごしらえをしつつ下味を付ける。
愛しい愛しい岩城の為に、今夜は愛情一杯の和食の予定だ。
おっと二階も忘れずに。整理整頓、寝室のベッドメイキング等々。
家中を目まぐるしく動きながら、香藤は精力的に家事をこなしていった。

食事の準備が大方整う頃には ようやくあたりにも夕闇が訪れ、
蝉時雨は続いているが 外の熱気もだいぶ落ち着いてきたようだった。
忘れずに、岩城の育てている草木にも水を撒いた。
一瞬ムッとした蒸気にかえって温度が上がったように思えたが、
しばらくすると涼しい風が吹き始めた。

心地よい風にほっと息をつきながら、明るい夕暮れの空を仰ぐ。


「ん~今日もお疲れさん!

今夜はいい月夜になりそうだね。

…おっと。ヤバイヤバイ、風呂!

岩城さんが帰ってきたら、すぐに入れてあげたいから…

俺も汗臭いし。一緒に入っちゃおっかな~ンフッ

またマッサージしてあげるからね。

夫婦水入らず…ク~~ッ!萌える~~~っ!! 」







(後編に続く)

2005年8月
2014年10月再掲載にあたり加筆修正しました




ご訪問並びに拍手&拍手コメントありがとうございます!!m(_ _)m
この記事の拍手コメへの御礼お返事は 順次  ↓ の続きへどうぞv

続きを読む »

 | HOME |  »

プロフィール

すふらん

Author:すふらん
BLが、JUNEと呼ばれていた頃からのドップリこっち人間。
色んな作品に嵌ってきたけれど、今は新田先生の作品、
とりわけ春抱きが生活の中心。
好きな声優さんは一杯いますが、現在のマイブームはやはり森川さんや三木さん。
関俊さんは20年以上のファン。

画像は我が家の春抱きドール達♥

★すふろーぐ★2008.5.14開設

カレンダー

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

最近の記事

カテゴリー

月別アーカイブ

リンク

バナー

 直リンクはご遠慮下さいませ

All About Nitta Youka
新田祐克先生の公式サイト

QRコード

QRコード

ブログ内検索